前回の記事で、手鍋焙煎を始めるときの道具の選び方を紹介しました。詳しくはコチラ。
さぁ焙煎する環境は整いました、早速始めましょう!と言いたいところですが、ちょっと待ってください。焙煎をするに事前にしておきたいことがいくつかあります。
せっかく始める自宅焙煎ですから、おいしいコーヒーにしたいですよね。そのために今回は、下準備として必要なポイントを何点か押さえて説明していきます。
この記事では、いざ焙煎を始めようとしている方に向けて、
・コーヒー豆はどこで購入して、どんな豆を選べばいいの?
・コーヒー豆は買ったらそのまま焙煎していいの?
・焙煎の記録はした方がいいの?
そんな疑問を解消できます。鍋焙煎に限らず、コーヒ焙煎初心者の方には参考になると思いますのでよろしければ最後までご覧ください。
1.コーヒー豆の購入
道具は揃ったものの、肝心なコーヒー豆は何を購入すればいいのか、どこで購入すればいいのか悩みますよね。私もそうでした。
オンラインで購入する場合「コーヒー生豆 通販」で検索すれば多くのサイトが出てくるとは思います。
ところが、業務用販売のみで個人向けに販売していなかったり、数キロ単位からの販売など気軽に始めるはずの焙煎が急にハードル上がってしまいそうになります。
販売店だけでも多すぎるのに、さらにそこからどの産地の豆を買えばいいのかということまで考え始めるとそれだけで混乱してしまいますよね。
そこで今回は販売店の紹介などは一旦置いておきまして、まずはこの豆を購入するのがおすすめ!というものを1つに絞ってピックアップしましたので、参考にしてみてください。
もしも焙煎に慣れてきて、もっといろいろな豆を焙煎してみたいと思った時には、
また別の機会に「販売店のおすすめ」や「おすすめコーヒー豆」などは改めて記事にしようと思っていますので、そちらをご期待ください。
コロンビアスプレモがおすすめ
早速ですが私が焙煎していて思う、焙煎初心者に一番おすすめの豆は「コロンビア スプレモ」です。
スプレモというのは、コロンビアで生産されているコーヒー豆の最高等級という分類です。コロンビアではコーヒ豆の等級は豆の大きさ(スクリーンサイズ)で判断されていて、誤解を恐れず言うと大きければ大きいほど良い豆とされています。
コロンビアではスクリーンサイズ 16以上とピーベリー(カラコル)だけがスペシャルティ コーヒーに分類され、貴重なコーヒーとして取引されます。
FNC コロンビアコーヒー生産者連合会
スプレモはスクリーンサイズが17以上のもので、一般的に流通されている豆の中では最も品質の高い豆です。余談ですが、それ以上に大きい18以上の豆もあり、価格がグッと上がるうえに非常に貴重です。(「エメラルドマウンテン」と呼ばれる豆もこれに当たります。)
コロンビアスプレモのおすすめポイント
そんなコロンビアスプレモを初心者におすすめできる理由は2つあります。
・焙煎がしやすい
・コストパフォーマンスが良い
焙煎がしやすい
コロンビアスプレモという豆は、焙煎がしやすく失敗しにくい特徴を持っています。
どういうことかというと、焙煎を失敗してしまう原因としてよくあるのは、
①スコーチド・・・表面の焦げ付き。中身は焼けていないことも。
②ベイクド・・・長時間焙煎による苦味。
③アンダーデベロップ・・・焼けていない
④オーバーデベロップ・・・焼きすぎ
というものがあります。これらは火力コントロールの問題が一番の原因ではあるのですが、実は焙煎の難易度は一粒一粒の豆の大きさに影響を強く受けます。
小さい豆は火が通りやすく、大きい豆は焼けにくい。大きい豆は表面積が大きいので鍋に触れやすく焦げやすい。豆の大きさが揃っていないと、焼きムラが発生しやすく全体的に仕上がりが均一にするのが難しいため、焙煎の難易度が上がります。
コロンビアのコーヒー豆は等級が豆の大きさで区分されているというお話をしました。つまり豆の大きさが比較的揃っている状態で販売されているため、焙煎にムラが起こりにくいんです。
さらにはコロンビアスプレモは焙煎中の豆のリアクションが分かりやすいです。「1ハゼ(ファーストクラック)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
焙煎が進んでいくとコーヒー豆に火が通り、豆内部で発生した蒸気やガスが膨張して、生豆の細胞を押し広げることで「パチパチ」と爆ぜる音が発生します。
このタイミングが焙煎時に非常に重要なタイミングなのですが、同じような価格帯・クオリティの別産地の豆と比較して、コロンビアスプレモという豆はこのハゼ音が非常に聞き取りやすいのです。
ムラが出来にくくて、タイミングも図りやすいので、練習用にはもってこいですね!
コスパがいい
コロンビアスプレモは練習用としても比較的安価に購入できる豆です。それでいてこのくらいの価格帯のコモディティコーヒーとしては、味のクオリティが高いと思っています。
価格としては1kg当たり\2000前後で購入できる印象ですね。 ※2024年現在
味わいとしては、甘み・コクがあるのが特長。全体的に癖が少なく、すっきりとした酸味もあってまさにバランスの良い味わいです。ブレンドコーヒーにもよく使用されるのもうなずける、多くの方がおいしいと感じられる万能プレイヤーです。
今回はあくまで「初心者が焙煎用として買うなら」という基準で選んでいます。
味わいに関して言えば、もしも既にお好きな産地や豆がある場合にはそちらを選んでも全く問題はありません。好きな豆を自分で焙煎できることほど楽しいことはないですからね!
おすすめ購入先
試しに初めて生豆を購入するなら、できる限り少量で注文ができるお店がおすすめです。
楽天やAmazonなどのECサイトでも購入はできますし、私がいつも利用していてお求めやすいのは「松屋珈琲」さんですね。
松屋珈琲さんはAmazonなどにも出店されていますし、焙煎初心者のための生豆スタンダード5種類セット(コロンビアスプレモ含む)なども割安で販売しているので、初心者にとっては非常にありがたいです。
通販以外で、もしもご自宅の近くで生豆を購入できるお店がある場合は、その方が送料もかからないのでいいですね。
2.ハンドピック(ハンドソーティング)
さて、生豆を無事に購入して自宅に届いたら焙煎スタートです!ですが、ここでももう一つ準備としてしておいた方がいいことがあります。
それが「ハンドピック」です。
ハンドピックというのはコーヒーの味を損なう原因となる「欠点豆」や石などの混入物を、手作業で丁寧に取り除くことを言います。
コーヒー豆は農作物です。現地国で出荷される前に丁寧な選別作業が行われているのですが、人の手によるものですから、私たちの手元に届く生豆にはわずかではありますが不良豆が混じっています。
それらを焙煎する前に改めて目視で取り除く作業をすることで、よりクリーンでおいしいコーヒーができます。
もちろん個人で楽しむ分には、そこまで気にする必要がないとも言えますが、せっかく自宅で焙煎するんですからひと手間かけておいしく焙煎したいですよね!
欠点豆の種類
具体的に欠点豆とはどういうものをいうのでしょうか。ざっと挙げていきますと、
虫食い豆
蛾の幼虫などが豆を食い入りこんだものです。
入り込んだ穴からカビが生えている場合が多く、異臭や濁りの原因になります。
割れ豆・変形豆
乾燥ムラがあったり、移送中の衝撃で豆が割れてしまったりしたものです。煎りムラの原因となり、珈琲の味が不安定になります。
黒豆
発酵が進みすぎると生豆が黒くなります。カビが進んだものも黒豆のようになります。
腐敗臭を発する原因となりますので必ず取り除きます。
貝殻豆
精製の過程で中身が抜け落ちてしまった豆。薄く焦げやすいため取り除きます。
ピーベリー
通常コーヒーは、実の中に種子が2つ入っているのですが、稀に何らかの原因で1つしか入っていない場合があり、これをピーベリーといいます。
小さく丸いため、焼きムラになりやすいのでできれば取り除きます。
ですが反面、希少で高級な豆として扱われることもあるピーベリーは、単体では味を損なうものではありませんので集めておいて単体で焙煎するのも良いかもしれません。
その他にも画像は用意できませんでしたが、
- 未成熟豆
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成長しきれなかった豆です。小さいものや、成熟前に摘み取られたいびつなものなどがあります。嫌な酸味や渋み、青臭さなどの原因になります。
- 死豆
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成熟はしたものの、何らかの理由でその後死んでしまった豆。正常な豆と比べて色が白っぽく、焙煎してもあまり色付かず白っぽいままなので、焙煎するとすぐに分かります。
- パーチメント
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パーチメントと呼ばれる果肉の内側にある内果皮が、取り除かれずに残ってしまっているもの。
風味に影響はありませんが、火の通りが不均一になります。 - 異物
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小石や木の枝、時にはネジなどの工業製品が混入していることも極まれにあり。当然取り除きます。
などコーヒーにはさまざまな種類の欠点豆・異物が存在します。おいしいコーヒーを焙煎するためには、素材から気を使っておきたいですね。
ハンドピックの方法
ハンドピックには決まった方法も、どのくらいの精度で除去すべきかなどの基準などはありません。ですので、私なりにどういった工程で行っているかの説明となります。
生豆が届いたときにまとめてざっくりハンドピックを行います。
ここでは量も多いですから、ざっと目で見てわかりやすい欠点豆を取り除きます。
「黒豆」「虫食い豆」「カビ豆」「異物」などはできる限りピックしていきます。
鍋焙煎では多くても200g程度の焙煎になりますので、焙煎前に改めてハンドピックを行います。
購入時よりももっと精密に気を使ってハンドピックをします。
ここで取りこぼしていた「虫食い豆」「貝殻豆」「変形豆」などが発見できることが多いですね。
最後に焙煎した豆にもハンドピックを行います。
「死に豆」や「未成熟豆」「パーチメント」などはここで初めて焼きムラで判別できることもあります。
また、欠点豆でなくても明らかに他よりも焙煎が進みすぎている、焼けていない豆は味の安定性を損なうので弾いています。
ハンドピックは、平らで豆が見やすいバットなどに広げて行いましょう。どのくらい丁寧に行うかはそれぞれだと思います。私の場合は結構気にするタイプなので、順々に少しずつ2~3回は繰り返しみてますね。
3.焙煎記録を取る
こうしておいしいコーヒーの焙煎するための下準備が整いました!
いよいよ焙煎に入るわけですが、最後に「焙煎データの記録」に関してお話しましょう。
ここからは焙煎に慣れてきて、もっと安定的焙煎を考えるようになってきたらにはなりますが、「焙煎プロファイル」や「焙煎データ」を記録しておくと、うまくできたときの再現性が上がるというのはもちろん、うまくいかなかったときの原因を探るヒントになります。
具体的に何を記録するかというと
・焙煎環境(日付・温度・湿度など)
・焙煎する豆の情報(産地・品名・精製方法など)
・投入量
・焙煎後の質量
・温度(投入温度、中点、時間ごとの豆や焙煎機内温度)
・焙煎時間(1ハゼ、2ハゼ、煎り止め)
といった感じで、本気で記録を取ろうとすると多岐に渡るのですが、私も実際はここまで記録はしていません。
というか技術的に出来ません(笑)。
鍋を振りながら細かくメモを取ったりするのは、正直言って難しすぎますね。
ここまで詳細の記録ができるのは業務用焙煎機や、家庭用の中でも温度センサーがついているもの、パソコンでデータ化できるものの場合ではないでしょうか。
とはいえ、できる限りデータを楽に保存できる方法はないかと探して見た結果、個人的にもずっと使っていておすすめできるアプリがありますので紹介しようと思います。
(私がiphoneを持っていないので、あくまでAndroidアプリの中でのおすすめとなります)
それがこちらのCoffee Roaster Pro。
有料版と無料版がありますが、まずは無料版でも基本的機能は使えますのでそちらで試すのが良いかと思います。
有料版になると、保存データ量が増えたり、ブレンド豆の登録、焙煎最中の詳細設定、パラメータ入力などが追加でできるようになります。
無料版画面
有料版画面
但し注意点としてはすべて英語表記ということですね。一度慣れてしまえば機能が分かるのですが、最初は少し戸惑うかもしれません。
私も細かい設定はすべて理解はしていませんが、それでも基本的機能だけでも使う価値があると思っています。
メリット
メリットとしては以下のようなところがあります。
・コーヒー豆の登録が可能。
ロードすることでデータ記録を開始できる利便性。
・タイマー付き。
1ハゼ開始、1ハゼ終わり、2ハゼ開始などをワンボタンで記録できる。
・ウェイトロスを自動計算。
焙煎前と後の質量を入力するだけで
・データをグラフ化。
温度を入力すると中間を補完する形でグラフ化してくれる。
・基本的情報は入力可能。
メモ欄もあるので、感じたことや備忘としても使用可能。画像も張ることができる。
デメリット
・温度は手入力。
初期項目として入力できるのは投入時、ハゼ開始、ハゼ終わり、煎り止めのみ。それ以外は追加入力する必要がある。
・英語表記なので使用方法が分かりにくい。
・無料版は登録できるデータが少ない
・タイマーの表示が小さい
一応タイマーはついていて、焙煎開始とともに動くがフォントが小さく焙煎中は見づらい。
必要十分なアプリ
いかがでしたでしょうか。まずは気楽に趣味として焙煎をされる場合にはこういった焙煎記録はすぐに必要ではないですし、気軽に焙煎を楽しむのが一番だと思います。
もう少し踏み込んで焙煎を上達させたくなってきた場合には、一つの選択肢として覚えておくといいのではないでしょうか。
記録を取って置いて、見直すことで上達につながると思いますよ。
まとめ
今回は手鍋焙煎を始める前の準備としてすべきこと3選としてお話をしてきました。手鍋に限ったことではなく、コーヒー焙煎をするにあたってはどれも必要なことだと思います。
これから焙煎を始める初心者の方には
・焙煎しやすいコーヒー豆を選び
・おいしくする下準備を行い
・上達のために記録を取る
という3点が、みなさんが楽しみながらおいしいコーヒーを焙煎するために必要なことだと、私自身焙煎を始めて感じたことです。
みなさんのコーヒータイムがより充実したものになりますように、参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。それではまた。